第三十四問[誓か呪か] つれないほど青くて あざといくらいに赤い 感想&考察

つれないほど青くて あざといくらいに赤い 第三十四問 感想&考察 感想&考察

本編更新&三巻発売で、とても喜ばしい記念日ですね!
さっそくの三十四問の感想と考察を進めていきましょう。

お化け

廃校に入り、お供え物の写真が撮られたところまで来たアラタとミハヤだったが、お供え物の一部無くなっていた。
そのことについての疑問を話していた二人の耳に、お化けの声が届く。

背筋が凍るシーンだった。

「どこにいるの」を連呼しながら、廊下の曲がり角から横顔のほんの一部しか見えない状態は、怖ろしい。
なにより1コマ目と2コマ目で、顔がほんの少しだけ前に進んでいることが、近づいてことを感じさせて、さらに恐怖を煽っている。
すごい速さで近づいてくる恐怖感はないが、ゆっくりと近づくそれはひたひたとした恐怖を感じさせてくれた。

あやふやな存在

お化けから距離を置くために、アラタとミハヤは、トイレに逃げ込んだ。
ここでミハヤがお供え物の推理を述べてくれるが、これは前座に過ぎない。

お化けについて「わからない」と答えてからのミハヤこそが、三十三問~三十四問を通しての一番の輝きであった。

お化けのことを「わからない」と言い、ミハヤ自身をそのお化けと重ね、全うな説明ができない存在であり、いつか忘れられて消えてしまうあやふやな存在であると語るのだ。

だからアラタ
君だけは簡単に僕を消してくれるなよ

つれないほど青くて あざといくらいに赤い 第三十四問「誓か呪か」 著者:tomomi 

このときの「わからない」のシーンの儚げさも良かったが、管理人は、この引用したセリフの方が印象的だった。
要するに「僕を忘れないで」というアラタへのメッセージだ。

答の話から、ミハヤは姿を消したことが予想されるが、たとえいなくなったとしてもミハヤのことを忘れないでほしいという、痛いくらいに切ないささやかな願いに、心が引き込まれた。

そして、次の一コマの描き方も最高だった。
目線が、個室の上を見上げているのである。
この目線の意味を考察してみると、

  1. お化けがトイレの中にまで入ってきており、アラタから見えないようにしつつも、お化けに近づかせないようににらみを利かせていた。
  2. 我々読者に向けて「お前たちも僕を忘れるなよ」という暗示

の2択であろうと推測している。

1つ目は、これまでもミハヤはアラタから見えないように怪異を排除していたので、一番ありえそうなパターンである。
理科室の怪異や背後にいた怪異、直近では死角にいた怪異がそうだろう。
ありきたりな推測である。

そして、2つ目。
これは管理人の願望が大いに混ざっている。

tomomi氏からのメッセージであるとともに、それをミハヤに乗せているとしたら、とても滑らかなメッセージであり、感嘆の吐息がこぼれてしまう。
それほどまでに、丁寧に紡がれた瞬間だと管理人は信じたい。

OGの集会にて

後日、OGといっても遥か昔の人たち、ババァが集まる集会にて、アラタは廃校の噂話を聞き取り調査していた。
ここでとある体験談を聞かされた。

性別不詳のとても綺麗な人に見惚れたという体験談である。

この話に怖さはない。
正体不明、解明不能であるのは怪異と似通った点はあるものの、たった一瞬の夢物語に類するものである。哀愁を感じさせ、こちらにも体験してみたい、体験してみようと思わせる感じは、日本の民話に時々見られるものである。

本編では「お化けに恋をした」と締められているが、おそらくもう一度その綺麗な人に会うことはできなかったのだろう。
この綺麗な人がミハヤと重なり、ミハヤの存在が怖い存在ではなく、あやふやで曖昧で怪異と表裏一体とはいえ、夢を見させてくれる存在に感じられた。

おわりに

いままでとは違う後味で終わった三十四問であるが、はたしてアラタとミハヤはどのような結末を迎えるのだろうか。
ミハヤの思いを噛みしめて、忘れずに次の更新を待ちたい。

次回、二〇二三年六月二日更新予定。

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