第七十四問[その願いは何度目か] つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

速水ミハヤとトキが屋上で会話したあと、どうやらトキはしばらく姿を見せていないようだった。

知山アラタは、久しぶりにミハヤと2人だけの時間をたっぷり過ごす第七十四問の始まり。

遠出

ミハヤの誘いで、一緒にバスに乗って出かけることになったアラタ。
目的地を目指すでもなく、二百五十円の運賃でできるだけ遠くまで行くだけを旅行を楽しむ二人である。

しかしながら、ちょっとのお金しか払っていないので、それほど遠くにいけるはずもなかった。

バスから降りて二人だけの時間。

アラタはミハヤから、君はいずれ殺されてしまう。と告げられた。

本当に近い内
君は殺されてしまうよ

出典:つれないほど青くてあざといくらいに赤い 第七十四問 著者:tomomi

アラタも薄々と感づいてはいるのだろう。
これまで様々な怪異と対峙し、危うい目に何度もあってきたが、こんなことを繰り返していては、いずれナニカに殺される未来は目に見えている。

そして、話の冒頭の会話にもあったが、強硬派とのいざこざはまだ続いており、安全とは言い難い。
私たち読者は、強硬派の中でもさらに過激な連中が暗躍していることを知っており、本当にいつ殺されても不思議ではない状況である。

そして、窮地にあっても、何度もミハヤに助けられてきたアラタであるが、ミハヤに助けを求めることはしなかった。

なら私はどうすれば良い

出典:つれないほど青くてあざといくらいに赤い 第七十四問 著者:tomomi

殺される前に

ミハヤにとっても、アラタがかけがえのない存在になってしまっているのだろう。
自分から縋ってほしいと願うほどにアラタと過ごす時間を守りたいと思っているのだ。

「怪異に襲われても守るから、私に助けを求めてほしい」とミハヤから請われたアラタだが、アラタがお願いしたことは別だったようだ。

そのときのミハヤの表情は驚きと悲しさがありつつも、ミハヤのことを想った末の願いだったのだろう。

  • 「人」なら実現可能なお願いであること
  • 「死に方を選べない」と言われたという前置き
  • ミハヤ曰く、アラタを恨みたくなるような酷いお願いであること
  • “その後”も会える気がする。というセリフ

推理するに、きっとミハヤに「殺してほしい」とお願いしたのだろう。

人間なら誰でも実現できて、死に方を選べ、ミハヤの「アラタを救いたい」という思いをないがしろにして、お化けであるミハヤとであれば、恨みがあれば死後も会えるだろう。

「人は成長し、忘れ去っていく生き物。だからこそお化けは寂しがっている。」というのがこの作品で一貫して込められてきたメッセージである。

アラタがミハヤと寄り添うように死ねば、死後もずっと忘れずに一緒にいられるから。
と、いつまでもミハヤのそばにいることを考えたお願いだからこそ、ミハヤは驚き、憎まれ口をたたきながらも、嬉しさを隠せていなかったのだろう。

おわりに

珍しく二人っきりの時間を過ごし、ささやかな約束したアラタとミハヤ。

おそらくこの結末は、第二答で中園ナツメが言うように死ぬことになるのだろうが、第一答で、1年後もアラタは生きていることが確定していたので、ミハヤではなく、別の原因で亡くなってしまうのかもしれない。

幕間となった第七十四問だったが、次はトキが復活してくることだろう。
自分を捨てるために、果たしてどれほどのことをしてくるのだろうか。

次回、二〇二五年三月十四日、更新予定。

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