第六答[卑怯者] つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

中園ナツメと柱場ハルヲが母校にやってきた理由は、知山アラタが消失した真相を解き明かすことだった。

志藤ハスミに協力関係を求める代償として、速水ミハヤのことを話し始めたその時、怪異が出現し、いきなり追いかけられたところで終わったのが、第五答。

逃げ延びた先で、ミハヤの正体、そして町の逸話の秘密が解き明かされる。

他人じゃない

協力を約束する前に、怪異に追いかけられて、成り行きで巻き込まれる形になってしまったハスミへの申し訳なさから、ハルヲは「話を無かったことにしてもいい」と持ち掛けた。

ハスミからすれば、ハルヲとナツメに関わることで、これまで以上に怪異にまつわる苦しみを味わうことになるが、それでも距離を置くことはできなかった。

私達はもう他人じゃない

出典:つれないほど青くてあざといくらいに赤い 第六答 著者:tomomi

これまで、独りぼっちで怪異に向き合ってきたハスミにとって、同じ苦しみを分かち合える仲間は、何にも代えがたいものだったのだろう。

怖いと言いながらもハルヲとナツメに協力するのだった。

正体

「ミハヤの正体は人である」というのは第五答でも述べられたが、その真意が語られた。

たしかに、お化けかもしれないが、何もないところから生み出されたものではなく、モデルとなる人物がいたので、正体は人であるということのようだ。

「この村の後世に続く繁栄を信じ」
「この土地の暗部 ここに記録する」
「どれだけ三歳で腹を満たし 屋根の下に柔らかい藁を敷こうとも」
「嘘吐きのそしりによって負った胸の傷はいずれ我々を殺してしまうだろう」
「緩やかで確実な死である」
「猜疑心に憑りつかれ 神を見失い 仏も土にまみれた今」
「たとえ稚拙であっても我々には信仰が必要なのだ」
「故に■■■よ いっそ我々を恨んでくれ」
「たとえ悪霊となっても その類い稀なるお前の美しさは」
「神を嘯く事すら適うだろう」
「この記録は」
「矢印 犬飼 爲水 の名を以て残し また隠すこと」

出典:つれないほど青くてあざといくらいに赤い 第六答 著者:tomomi

この記録を読み解くと、土地を追われた先祖たちが、自らの病のために苦しむことに耐えきれなくなり、ミハヤのモデルとなった■■■を、神様にするべく人身御供にしたのだろう。

そして、自分たちの都合で人身御供にしておきながらも、罪の意識に呵責されるのも耐え難かったため、記録の形にして、知らずの間に封印したのだ。

ミハヤがたびたび口にしていた「寂しい」という言葉の理由が繋がった。

そして、自ら積極的に近づき、そして破滅しなかったアラタは、ミハヤの心をどれほど救ったことだろう。

過去の歴史や正体、事実はともかくとして、目の前にいる速水ミハヤという存在を真正面から受け止めて、繋がり続けてくれたのは、後にも先にも、アラタだけだったのだ。

だからこそ、二人そろって失踪したのだろう。

おわりに

ミハヤの正体が明らかになったところで、ついにミハヤらしき陰が姿を現した。

ハルヲとナツメも、ミハヤを追いかけてくれたという意味で言えば、ミハヤの寂しさを埋める重要な存在なので、ここで姿を見せたとしても、不思議ではない。

とくにナツメとミハヤは、喧嘩するほど仲が良いと言うべきか、対等にぶつかり合える関係である。

ほんとうに、これがミハヤならば……

次回、二〇二五年四月二十五日更新予定。

コメント

  1. - より:

    最近このまとめサイトを見つけ、一気に拝見させていただきました。こちらの考察と一緒に作品を見返したり、楽しませていただいております。次回の更新も楽しみにお待ちしております。

    • 管理人 より:

      ご覧くださりありがとうございます!!
      楽しんでいただけて、良かったです!

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