第八答[ストーリー1] つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

志藤ハスミ、中園ナツメ、柱場ハルヲの3人は、知山アラタを賭けて、速水ミハヤに缶蹴りに挑んだ。ハルヲは早々に捕まってしまうも、ハスミが飛び出し、いざ缶を蹴る、というところで終わった第七答。

はたして、決着は如何にーーー。

人でなし

ミハヤの回想らしきものが数ページに渡って紡がれた。

どうやらミハヤの典拠は、元々存在していなかったお化け等ではなく、都の住人だったのようだ。
魔性の美しさ故に都を追われ、噂の拡大し、ついには”人ならざる美しき存在”として、町の先祖たちが見てしまう幻の正体とするべく殺されるに至ったようである。

お前には悪いがその魔性を以て、化け出てでもくれりゃあ皆が互いを疑わずにすむ
恨んでくれ
そして
ずうっと此処に……いてくれな

つれないほど青くてあざといくらいに赤い 第八答 著者:tomomi

結果、その死後も魂は町に留まりながら、多くの場合は神様として崇められながらも、禁忌とされ、畏怖され、罵られて、誰も彼もからも避けられ続けてきたのだ。

この作品で一貫して描かれてきた「さびしい」という感情が、ミハヤの視点からつらつらと紡がれた。

結局、誰にも興味や関心をもってもらえず、「神」としての肩書に吸い寄せられて慕ってくるような連中や、人ではないと敵視してくる者、そしてストレートに興味がないと無視される……
どのような形であれ、自分のことを知ってもらえないというのがずっと続いたのはとても寂しかったのだろう。

その中で唯一、ミハヤを人として見つめ続けたのがアラタだったのだ。

「お前をきっと死に方すら選べないだろう」と言われたアラタのお願いは、ミハヤに「助からないときは『人』としての方法で殺してほしい」であった。

おそらく矢印トキに腹を刺され死にかけているアラタを見て、ミハヤはアラタの願いを聞き届けるべく、首を絞めて殺したのだろう。

第八答の2ページ目、おそらくミハヤの典拠であろう人物の視界がブラックアウトしていくとき、これは殺されるときのシーンだろうが、このときの殺され方が首を絞めるという方法だった。

ミハヤにとって、人が人を殺すことの最適解が首を絞めるということなのだ。

ついに、第一答のアラタの回想と繋がった。ミハヤが泣きながらアラタの首を絞めていた真実が明かされた。

だから何処にもいかないで

つれないほど青くてあざといくらいに赤い 第八答 著者:tomomi

興味深いのは、ミハヤのセリフ回しがミハヤを殺した町の人と同じことである。

■町の人がミハヤが殺したとき

お前には悪いがその魔性を以て、化け出てでもくれりゃあ皆が互いを疑わずにすむ
恨んでくれ
そして
ずうっと此処に……いてくれ

■ミハヤがアラタを殺したとき

恨んでくれていい
化けて出てくれたっていい
 
好きだ
好きなんだ
だから何処にもいかないで
一緒に居てよ アラタ

その関係性は異なるものの、死後も一緒に居てほしい、たとえ殺したために心地よい関係が途切れてしまっても、一緒に居れるのであればなんだったいい。という願いが込められている。

ハスミのセリフではないが、ミハヤとアラタの幸せを願ってしまう。

二人とも死者になってしまっても一緒に居ることの幸福が訪れることを祈ってやまないのは、ハスミに限らず、ここまで読んだあなたも同じだろう。

おわりに

さて、缶蹴りは決着が着き、ハスミがしっかりと缶を蹴飛ばしたようだ。

勝負に勝ったので、これでアラタの魂を取り返すことができるのだろう。

ミハヤにとっては苦しいが、アラタが神隠しから解放され、あと少しで十年前の世界に戻り、第七十五問以降が描かれることだろう。

しかしながら、この第八答を読んだあとでは気持ちが変わってしまった。
ミハヤからアラタを取り返して町の真相を解き明かしてほしいと思っていたが、アラタを解放したことで、ミハヤとアラタのハッピーエンドに水を差したように思える。
ナツメとハルヲがいなければ、ミハヤとアラタは二人で、きっと幸福なときに過ごしていたと思うと、この展開で良かったのだろうかと思ってしまう。

次回、二〇二五年五月三十日更新予定。

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