第六十八問では、夏休み明けのアラタのところに、ファンを名乗る人物が現れたところで終わった。
その導入が少しわかる六十九問の始まり。
矢印やじるしトキ
アラタのファンは、矢印トキと名乗った。
一年三組 矢印トキ
嫌じゃなければ「トキ」って呼んでほしいなっ
眼帯もアラタの真似をしているようである。
最初の自己紹介こそ普通であったが、早々にヤバい人間であった。
1ページいっぱいに文章が書きこまれていた。
転校初日にアラタが校内の全ての扉を開けて周っていたのをストーキングしていたらい、同じように体育館で倒れるまでいたり、おそらく目も突き刺した可能性が垣間見える。
そして、どうやらトキは女の子のようである。
ミハヤからは、矢印ちゃんと呼ばれていたり、ワイシャツをはだけたときに着ていたインナーは、メンズではなさそうであった。
アラタみたいになりたくて、男装をしている可能性が大いにあるだろう。
一年三組なので、ナツメと同じクラスだが、ナツメはトキのことをどのように認識しているのだろうか、気になるところである。
憧れ
トキのアラタへの熱狂は「アラタになりたい」という同化願望だった。
アラタのファンを名乗っているが、アラタを応援とか、好きとかではなく、アラタを強烈な憧れの果てのようである。
君になりたい
それにしても、なぜトキは、アラタを理想というのだろうか?
特別になりたい。というのは、ありがちな願望だが、それとは本質が異なるように見える。
ミハヤのことを「ミハヤ様」と呼んでいるので、ミハヤを崇拝する一派の関係者なのだろう。
しかし、その一派の誰のこともミハヤは認識していない。名前をわかるかもしれないが、そこに感情はないだろう。
しかしながら、アラタだけは異なる。
ミハヤからも感情を向けられ、執着されているのだ。
ミハヤを神と崇める者たちからすれば、アラタは神の寵愛を独占する人間である。
とすれば、アラタに成り代わりたいと思うのは、自然なことのように思う。
特別になればミハヤの寵愛の対象になれると思えば、狂信者が辿る行動は目に見えている。
嫉妬
トキがアラタに接触したことで、ラッキーなことに、ミハヤが嫉妬した。
今までのミハヤは、アラタを弄ぶことが多かった。
アラタのいないところでは、アラタへの想いを口にすることはあったが、賭けが災いしてか、アラタの前では、あまり感情を示すことがなかった。
それが吹っ切れたかのように、普通にアラタへの執着を見せてくれた。
今からアラタと予定を作る予定が出来ただけの事さ
ミハヤから、アラタに近づいてきてくれるのは、嬉しいことだろう。
おわりに
トキについて少しだけわかり、ミハヤが嫉妬する可愛いシーンも見れた第六十九問。
怪異や神秘は鳴りを潜めているが、しばらく人間の怖さを見ることになるだろうか。
次回、二〇二四年十二月二十七日更新予定。
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