ムジナに追いかけられていた知山アラタは、速水ミハヤと猫たちのおかげで、無事に異世界から脱出することができたところで終わった第四十一問。
アラタとミハヤ、二人だけの逢瀬は久しぶりであるが……
懲らしめる
相も変わらず自分の身を顧みずに単身で危険を冒すアラタに対し、やはりミハヤが怒っていた。
為水ショウコの報告を聞いて、ミハヤはアラタを助けに来たが、言葉の端々にアラタをなじる空気が感じられる。
追い詰められたアラタがムジナを噛み合う姿を見て、獣の争い、つまりはアラタも獣だと言葉で責め立てていた。
だが、そんなアラタの行動を「本能的で故にシンプルでその凶暴さは官能的ですらあった」と責めつつも、ミハヤはその姿に興味をもっているのである。
つれないほど青くて あざといくらいに赤い 著者:tomomi
それもそうであろう。
まず、二人の関係がスタートしたときから、アラタはミハヤに対して、並々ならぬ感情を露わにしていた。
それこそ第三問で「俺は先輩の心も身体も秘密も全部欲しい」と欲望を吐露していたアラタを、ミハヤは興味津々であった。
もちろん賭けが「1年間ケダモノにならなければアラタの勝ち」なのだから、アラタがケダモノに堕ちるように誘導しているとも言えるが、ミハヤは人の本能や欲望、獣性を露わにし、あまつさえその対象となることで悦にひたっているように見える。
だからとこそ、アラタとムジナのやり取りを見て、欲情したのだろう。
罰
さて、独りで飛び出したアラタへの罰であるが、「おねだり」のかたちで獣性をミハヤに向けさせることであった。
そのおねだりの内容は、ミハヤの首筋を噛むことである。
しかしながら、一度でもケダモノになって犯したいと思った相手を犯さず、何とか踏み留まって現在があるのだ。
にも関わらず、ミハヤのおねだりで、アラタはケダモノとなる境界を踏み越えるしかなくなってしまった。
本能はいざ知らず、理性ではミハヤのおねだりである「首筋を噛む」をことで手を止めなければ、瞬く間にケダモノに堕ちていくことを理解しており、なんとか心にブレーキをかけようとしていた。
つれないほど青くて あざといくらいに赤い 著者:tomomi
だからこその告白である。
「好きだから傷つけない」というアラタなりのケジメというか、自らに言い聞かせているのだろう。
傷つけたくないけど、好きな人のおねだりだから傷つけるのだ。という、自身のへの言い訳なのだ。
そして、これまた第三問とリンクするが、罰として、ミハヤがアラタの首の左側を噛んだのだが、今回はアラタがミハヤの首の右側あたりを噛んでいる。
シンクロするシーンであるが二人の関係性の変化が感じられるだろう。
初期は、まだ関係が進展しておらず、アラタだけが一方的に青い欲望をミハヤに示すだけの関係だったのが、最新ではお互いに関心を持って、ミハヤからもアラタに対する独占欲が垣間見える。
この噛み傷をマーキングと読み替えると、数多くいる獲物に対する目印だったものが、ミハヤを傷つけてもよい唯一の獲物へと格上げされたようにも感じられる。
おわりに
ラストのシーンが非常に官能的であった。
ここ最近は、官能的な表現に力を入れているようにも感じられて、ただただ表情がエロい。
唇が異様にてらてらと紅く、滴る雨粒が汗や涙のようで、蠱惑的である。
次回、二〇二三年十月十三日更新予定。
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