第十答[別れ] つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

玄関の扉の向こうに影が姿を現した。
柱場ハルヲは影に向かって問いかける。

想い

アラタがいなくなってからのハルヲ、中園ナツメ、為水ショウコの気持ちを確認できた。三者三様にアラタへの想いを確認できたのは嬉しい。

ナツメやハルヲがアラタの助けになろうと行動していたのは明らかだったが、ショウコはアラタに対して、ツンケンしながらもなんだかんだアラタを助けてくれた理由の一端を垣間見ることができたのは嬉しい要素である。

玄関の前には立たないものの、ショウコは角に立ち、ハルヲがアラタに語り掛けるの聞いていた。

アラタの死をきっかけとして、三人とも人生をかけてアラタを救おうとした、アラタの助けになろうと十年間足掻いてきたのだろう。

出典:つれないほど青くてあざといくらいに赤い 第十答 著者:tomomi

気持ちを吐露する前のハルヲの表情が非常によい味がする。

アラタが「すまない」の一言で片づけようとしたこと、自分たちと距離を置こうとしていることに対して、感情的に出そうになる言葉を抑えこみ、それでもなおアラタには言わなければならないと決めた表情が、ハルヲが怒鳴った直後、次のセリフを言う前に一拍置いて描かれることで、ハルヲの感情のリアリティを醸し出している。

幸せ

一緒にいるために殺し殺されたミハヤとアラタは、十年経った今、お互いの姿が溶け合っているようである。
アラタの言葉を使いながらも、お化けと混じり合い、姿形は、異形の化け物に近づいていた。

この形になった原因は、アラタが語られないことにあるようだ。

「忘れられてしまうのはさびしい」ということなのだろう。

曖昧な情報ゆえに正確に伝わらず、語られないため記憶が風化し、徐々に輪郭を失い、ミハヤの一部として溶けているのだろう。

まだ、アラタの人格を有しているのは、たったの10年前のことなので、アラタのことが完全に忘れ去られるには早すぎるからであろうが、これがもっと時間が進めば、完全に消えてしまう。

自分の存在を失うことの恐怖が寂しさの源泉であるのだろう。

さて、ではアラタをどう助けるのだろうか?

ハルヲとナツメはアラタを助けるために来たが、すでに他の怪異と混じり、忘れかけてられているアラタをここから分離させるのは至難の業のように思える。

ハルヲも、全てを取り戻してハッピーエンドを迎えることは期待していないようだった。

でも大人になって解った
現実に最善策なんてそう在りやしないって

出典:つれないほど青くてあざといくらいに赤い 第十答 著者:tomomi

本話の最期にハルヲが「恨んでくれていい」と言ったセリフから類推するに、何か手を打つのだろう。

予想するに、新しい逸話を流すのだ。

すでに学校の七不思議の一つにアラタは組み込まれている(第ニ答参照)ので、こういった逸話を組合せながら、なるべくアラタの型枠は残していくのだろう。

それも、ミハヤの逸話とは別の逸話として・・・

アラタの逸話を完成させることで、ミハヤにまつわる逸話の一つとしてではなく、アラタという個別の存在として、供養のために語ることで、町に根付かせるのだ。
ミハヤとは関係ない逸話として語ることで、強硬派の影響を回避しながら、地域に浸透させるのだろう。

折角、ミハヤと添い遂げることができたアラタであるが、アラタの個として逸話が広まれば、ミハヤとは別の存在になってしまう。

それこそ一緒に居ることはできなくなるだろう。

だからこその「恨んでくれていい」と言ったと思うのだ。

終わりに

第十話はハルヲの切ない表情があちらこちらに散りばめられ、非常に心を震わす回になった。

続きはハルヲがどのような決着を示すのが語られることだろう。

いつまでも影や表情を失った姿ではなく、十年前と同じ姿で三人の前に現れるのを期待して待ちたい。

次回、二〇二五年七月十一日更新予定。

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