第四十四問から三週間を空けて、掲載された第四十五問。
これまでの違和感、疑問、隠されていた物語の秘密を解く鍵が一気に明かされ、興奮が収まらないが、その中からとくに気になったことに触れていこう。
謎の人物
第四十五問では、突如新しい語り部が登場した。
黒い長袖の服を来て、速水ミハヤファン倶楽部の面々と同様にローブのようなものをかぶった人物である。
第一印象は、女性だ。それも高校生ではなく、妙齢で品のある女性といった佇まいである。
この人物は登場するなり、知山アラタ、中園ナツメ、為水ショウコ、犬飼のことを説明していた。
- 知山アラタ → …(直接語られず)
- 中園ナツメ → 探求者
- 為水ショウコ → 信奉者
- 犬飼 → 裏切り者の仔羊
この人物は、速水ミハヤを、そして学校の七不思議に関することをどこまで知っているのだろうか?
この口ぶりから察するに、速水ミハヤを信仰しているように感じられるが、「速水ミハヤを知ってはいけない」という七不思議を作り上げた黒幕のように疑っている。
第四十三問で、犬飼が答えられないといった七不思議の秘密について、なにか知っているのだろう。
出典:つれないほど青くて あざといくらいに赤い 著者:tomomi
速水ミハヤの物語
今回は驚きの連続であるが、続いて犬飼から語られた速水ミハヤの物語を確認・整理していこう。
現人神 速水ミハヤを語る一年の逸話は
出典:つれないほど青くて あざといくらいに赤い 著者:tomomi
右耳から【神の信奉者】がその御業を説き
左耳から【悪魔の証明者】がその仕業を吠え……
ついに探求者は全ての謎を解き神秘の正体に答を出す
そういう道筋の物語です
これは、ミハヤを神とした神話なのだろう。
奇跡ともいえる速水ミハヤを現人神、いわば人の状態から、神への昇華させるためであるらしいのだ。
この物語には3つの登場人物が出てくる。
「神の信奉者」「悪魔の証明者」「探求者」である。
犬飼のセリフからのみ読み取るならば、
神の信奉者 → 速水ミハヤファン倶楽部の面々
探求者 → 知山アラタと中園ナツメ(これは第四十三問で、犬飼から言われている)
となるが、証明者のみが正体不明である。
一方で、謎の人物が語るには、
- 知山アラタ → …(直接語られず)
- 中園ナツメ → 探求者
- 為水ショウコ → 信奉者
- 犬飼 → 裏切り者の仔羊
となっていたので、消去法で考えると、知山アラタは悪魔の証明者ということになるだろう。
この時点で、当てはめる役柄が、犬飼と謎の人物との間で乖離が生じているのである。
もしかすると、犬飼も誰がどの役回りなのか知らないのだろう。
ここ数話の犬飼の振舞を見るに、ミハヤが神であると証明するのは自分自身だと言わんばかりであり、自らこそが探求者としてミハヤの神秘を証明する存在になろうとしているようである。
だが、謎の人物からすれば、犬飼は物語には本来関わるべきではない存在、もしくは物語の脇役に過ぎない存在なのかもしれない。
さらに先に考え進めると、探求者(=ナツメ)が七不思議を解き明かすものならば、
アラタはミハヤの秘密を知ることができないままで終わってしまうことを予言しているかのようである。
最終的に、アラタの死が明らかになっていることもあり、もしかするとアラタは最後の最後にミハヤとの賭けに負けてしまうのかもしれない。
首
その神秘を示すため、ファン倶楽部々員が持ってきたいのは、ミハヤの首であった。
ほかにも布に包まれたさまざまな大きさのナニカを抱えるファン倶楽部々員であるが、サイズの違いから考えられるのは、バラバラにされたミハヤの遺体に違いない。
神の復活は、イエス=キリストの復活を連想させる。
死を遠ざけることができるのは、人間ではなく、神だからこそ。ということなのだ。
教義のためなら神すら殺すとは、まさしく狂信者である。
「神を信じなさい」という泣きながらのたまう犬飼は、常識の檻を抜け出してしまったようである。
つれないほど青くて あざといくらいに赤い 著者:tomomi
このシーンで、血が出るほどに拳を握り締めるアラタがよい。
身勝手にミハヤを神格化し、遠ざけ、挙句の果てには殺してしまう奴らへの怒りと、アラタ自身が自らへの不甲斐なさで力を込めているかのようである。
おわりに
物語の一番大切な重要人物が亡くなってしまった。
とくに秘密も明かされないままである。
だが、ミハヤがこんなことで終わるとは思えない。
次回の最後らへんでミハヤが背後から語り掛けてきそうな予感がする。
アラタへの未練たらたらのままでミハヤが消え去ることは考えられないが、次回の展開は全く予想がつかない。
次回、二〇二三年十二月八日更新予定。
コメント