第四十九問にて、七不思議狩りの物語が決着となり、速水ミハヤに狙いを定める組織がいることが発覚した。
その一部が暴走した結果が七不思議狩りの発端となる七不思議の増殖であり、ムジナを巻き込み、大きな争いとなったのだが、そのおかげで、組織の存在、町長の登場、とある神話があきらかになった。
知山アラタは、ミハヤへの想いをさらに強くし……となる第五十問は、物語にひと段落がつき、二人の交流を描く。
家
町長と別れて、ミハヤと二人きりで会えたアラタは、ミハヤを家に誘った。
この手の描写だけで、お互いの心理状態が見えてよい。
求めるアラタとつれないアラタの関係が見えるようである。
「今夜 時間ありますか」
つれないほど青くてあざといくらいに赤い 第五十問 著者:tomomi
お泊りデートとなれば……と期待したのだが、「ケダモノにならない」という賭けがあるからなのか、アラタは全く手をだそうとしなかった。
お風呂を貸しても外から見張る、ベッドに誘われても眠くないと断る。
ミハヤの自分の近くに置いておくために家に誘ったようであった。
普段のアラタであれば、もっと浮足だつし、ミハヤに誘われたら、警戒しながらも身をゆだねてしまいそうなものであるが、そうならなかった理由はすぐに明らかになった。
駄々をこねる
アラタがミハヤを家に誘ったのに、何もしない理由。
それは、ミハヤの死体を見てしまったからこそ、今度は目を離すまいと監督し続けるためであった。
だから、ベッドに誘われても「眠くない」と言って、拒絶したのである。
目を離した隙に死んでしまわないように、殺されてしまわないように、後悔をしないために、「死んじゃイヤだ」という感情の溢れた結果が、お泊りの理由だったのだ。
ミハヤはその気持ちを汲み取り、アラタを抱きしめた。
さて、アラタがミハヤに縋る気持ちを知ったあとの会話で気になるセリフがあった。
もしも私が猫や虫になってしまったら
つれないほど青くてあざといくらいに赤い 第五十問 著者:tomomi
君は私を探し出して「恋しかった」と言ってくれるかい?
ミハヤは「意味の無い話」だと言うが、脈絡なくそんな話をするだろうか?
ミハヤが猫や虫に姿を変貌できると仮定するのが妥当だろう。
だからこそ、誰も家を見つけることができないことや、やたらと運動神経がよい理由の説明になるだろう。
きっと「速水ミハヤ」というのも変化した姿の一つに違いない。
となるとその正体は、一体なんなのだろうか?
化けて騙す怪異は、山のようにいるためまだ糸口は見えてこない。
おわりに
お泊りはあっさりと終わって朝になってしまった。
アラタが目覚めるとミハヤの姿は昔話のように消えてしまったが、そこには髪の毛一本残されていた。
これをすぐ見つけて嗅ぎはじめるあたり、アラタもだいぶヤバい。
だが、ミハヤはまだ消えずにいる証拠がつかめたことで、物語は続くだろう。
次話に期待しよう。
そして、第五巻が発売された。
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表紙は、ムジナを倒した直後のミハヤである。
抱きしめるアラタではなく、読者に視線が向いている感じが怖ろしくも美しい。
次回、二〇二四年三月八日更新予定。
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