第六十四問[この幻は何処へ行く] つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

知山アラタが目を覚ましたのは、為水ショウコの家だった。
暴れたために縄で拘束されるという一悶着が起きたのも束の間、招かれざる訪問客が訪れる。

兄貴

招かれざる客は、柱場ハルヲの兄、柱場アキトを語った。
突如失踪した兄がいきなりハルヲを訪ねてくることそのものが十分に珍しい事件であるが、ハルヲの家ではなく、ショウコの家まで訪ねてくるのは不気味なことこの上ない。

怪しさ満点なので、ショウコもアラタもハルヲを制止するが、しかしながらハルヲは長年行方を追っていた兄貴が手の届くところにいることの期待に負け、踏みとどまることができず、駆け出してしまった。

運が悪ければ全滅もあり得る。

最悪の結末を回避するため、町長に助力を乞う電話をかけようとしたが、かけた電話口から聞こえてきたのは、「ごめんください」というアキトを騙る陰とは別の声だった。

ごめんください
ごめんください

出典:つれないほど青くてあざといくらいに赤い 第六十四問 著者:tomomi

陰の姿も、最初の人の姿だったものから乖離し、上半身は女性、下半身はなにやら巨大な化け物のようである。
シルエットだけ切り取るならば、「千と千尋の神隠し」のカオナシが近いだろう。

しかし、どうやら陰は家の中には勝手に入って来られないようなので、アラタとショウコは家の奥に避難した。

邪視

逃げ隠れた先で、ショウコはこの土地の伝染する病について話し始めた。

そこに登場したが、邪視である。

ハルヲが兄貴を求めたときの眼差し、これこそが邪視であるというのだ。

たとえ分の悪い賭けでも縋らずにはいられないんだ

出典:つれないほど青くてあざといくらいに赤い 第六十四問著者:tomomi

どうやらハルヲが飛び出したのは、やっと兄貴に会えるという歓喜だけではなく、邪視を発症したために、どうやら見えてはいけないものを見てしまったからなのだろう。

ミハヤを追い求めた結果現れる幻視の症状と同質の症状なのだろう。

見えてはいけないもの、見えるはずのないものが、自分の見たいものに見えてしまう病。

アラタやショウコにとっては化け物に見えていても、ハルヲには兄貴に見えていただろう。
だからこそ、飛び出してしまったと思うのだ。

おわりに

またしても、扉絵が一九九九年八月九日の写真だった。
今度は、山の向こう側に巨大な百足むかでのようなものが天に上る(地に潜る?)かのような写真である。

出典:つれないほど青くてあざといくらいに赤い 第六十四問 著者:tomomi

「八月九日 僕は君に喰われる。」にも、この百足のような化け物が何度も登場していた。
姦姦蛇螺かんかんだらは、最たるものだろう。

一九九九年は平成十一年だが、これも何かの伏線なのだろう。
特級怪異「八月九日」につながるヒントが潜んでいるのかもしれない。

次回、二〇二四年十月四日更新予定。

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