第五十一問[非合理はどちらか] つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

速水ミハヤとのお泊りデートを実現した知山アラタだったが、朝、目を覚ますとミハヤの姿はいなくなっていた。
その続きの第五十一問の展開は……

猫と非合理

忽然と姿を消したミハヤを探すために、アラタが頼ったのは、友人たちではなく、第四十問で登場した猫であった。

ミハヤとはそれなりに付き合いがあり、人間の知り合いでは知りえない情報を持つであろう彼らに頼る発想は、盲点である。

猫たちにとっても、アラタとの付き合いは、暇つぶしであり、娯楽となりうるものなようだ。

我々はあの方に正常な感情を向ける貴方の異常さに興味があるのです

出典:つれないほど青くて あざといくらいに赤い 第五十一問 著者:tomomi

アラタ以外の人間のミハヤに対するに認識は、人として通常の枠組みから外れた存在であることであろう。
そのうえで、アラタは恋心を種として、ミハヤは人であることを信じ続けているのだ。

「そんな面倒な感情は切り捨てて、生きやすい道を選べばいい」

弱肉強食の世界で生きる猫たちからしたら、アラタはさぞかし不可思議な存在に見えるだろう。
猫から見たら道化でしかないのだが、だからこそ猫たちは同胞の恩というだけでなく、娯楽として、アラタの話に耳を傾けるのかもしれない。

廃校

ミハヤを探すために向かったのは、いつぞやの廃校であった。

あいかわらず、顔が外を覗いている。
この顔の怪異、もしくは異なる怪異は、猫たちからしても厄介な存在であるらしい。

その忠告の声を聴いても、アラタは突き進むのである。

校舎の中をくまなく探すも見つからず、最後にたどり着いたのは、いつぞや隠れたトイレだった。
あのときは扉を閉めて隠れたが、今度は扉を開ける側に回るのだ。

3つの扉がいずれも閉まっているのが気味が悪い。

それこそ中にナニカがいる可能性があるのだ。

だが、個室の1つからは猫が飛び出し、残るは2つとなった。
さてどちらを開けるのか。

次回に答え合わせとなるだろう。

モンティ・ホール問題

「モンティ・ホール問題」というキーワードが出てきたので、解説をする。
「囚人のジレンマ」と言い換えてもいいだろう。

モンティ・ホール問題とは、
『閉まった3つのドアのうち、当たりは1つ。
プレーヤーが1つのドアを選択したあと、選択しなかった2つのドアのうちから、外れのドアが1つ開放される。
残り2枚の当たりの確率は直感的にはそれぞれ 1/2(50%)になるが、はたしてそれは正しいだろうか。

今回のトイレの扉は全く同じパターンである。
もし時間がある方は、ここで手を止めて、当たる確率はどちらが高いのか考えてみてほしい。

答えは(タップして長押し、もしくは、範囲選択すると見えます)

最初に選んでいた扉が当たる確率は3分の1、
選んでいなかった残っている扉が当たる確率は3分の2

つまり、もしアラタがこのことを覚えていれば、扉を変えたほうがより安心である。

だが、はたして、そんな簡単にミハヤに辿りつけるだろうか。

ミハヤは当たり前とは真逆にある存在であることから、むしろ悪い確率を選ぶほうが良いのかもしれない。
自らを省みず危険に飛び込むアラタだからこそ、ミハヤを引き付けてきたのだ。
ならばいっそ、危険を承知で突き進むほうがアラタにとっては、ミハヤの呼び水となる可能性が高まるだろう。

モンティ・ホール問題の詳しい解説は、以下サイトを参照してほしい。

モンティ・ホール問題とその解説 | 高校数学の美しい物語
モンティ・ホール問題を,直感的に納得できない人に向けて3通りの方法で解説します。条件付き確率にまつわる超有名な問題。

おわりに

ミハヤとの逢瀬が一筋縄ではいかないことは明らかであるが、ミハヤへの恋心がゆえに、アラタは危険に突き進んでいく。
はたして、このなかにミハヤはいるのだろうか。
どれを選んでも碌な目に合わず、ミハヤが救出しにくるという展開も万に一つはありそうなので、次回が楽しみである。

また、冒頭にあった「部屋から想い人が消えたなら」という詩のようなものが、オリジナルかどうか気になっている。原典が知っている人がいたら教えてほしい。

次回、二〇二四年三月二十二日更新予定。

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