姿を隠した速水ミハヤを探すため猫たちに助力を求めた知山アラタ。
情報を頼りにたどり着いたのは、いつぞやの廃校のトイレである。
非合理はどちらか
トイレには3つの個室があり、ミハヤはそのどれかにいるのだろう。
アラタが扉を開けようとする直前、選ばなかった扉から猫が飛び出し、はたしてどうするか?というとこまでが第五十一問であった。
モンティ・ホール問題の解説は前回したので割愛するが、つまるところ、
・最初に選んだ扉を開ける
・もう片方の扉を開ける
の2択しかない。
ミハヤに恋をした時点でアラタは、外す確率の高い最初に選んだ扉を開けるしかないのである。
深追いすることが危険視されるミハヤを追いかけ、危険な話であっても好奇心のままに突き進むアラタであればこそ、ミハヤはアラタのそばにいてくれるのである。
そのことを理解しているからこそ、アラタは非合理であっても、最初に選んだ扉を開けるしかないのだ。
正解
やはり、最初に選んだ扉を開けることが正解だった!!
見開きのイラストの美しさは最高である。
ミハヤに会えたことで満面の笑みを浮かべるアラタは勢いのままにミハヤを抱きしめ、ミハヤも抜け出してから一気に口づけをした。
甘酸っぱいことこの上ないシーンであった。ぜひフルカラーで見てみたいイラストである。
ホラーで官能的なカラーイラストしかなかなか出さないので、このような青春真っ盛りともいえるイラストは貴重だ。
こうしてみると高校生らしい若々しさとみずみずしさがあり、清涼感がある。
出典:つれないほど青くて あざといくらいに赤い 第五十二問 著者:tomomi
花びらじゃなくて、かつお節が舞ってるのか……
我儘
無事に正解を引き当てたアラタ。
ミハヤを探すゲームに勝ったと思っていたアラタであったが、ミハヤが言うには、どちらにせよアラタを見つけられたということなのだ。
どちらを選んでも正解にできたし、不正解にもできた。ということである。
運がよかったから。ミハヤの狙いを理解できたから。そのようなことでミハヤを当てられたのではなく、ミハヤが正解にしたかったから当たったということのようだ。
ミハヤ自身も「アラタが無事にミハヤを見つけることができた」というグッドエンドにしたかったのだ。
つまり、ミハヤもアラタに見つけてほしかったのだ。
もはやミハヤがアラタに恋をしたといっても過言でないだろう。
だから「私の負けだよ」というセリフが出たのだ。
私の負けだよ
出典:つれないほど青くて あざといくらいに赤い 第五十二問 著者:tomomi
今回のかくれんぼのことだけでなく、アラタとミハヤの恋の駆け引きにおいて、ミハヤが負けを認めたセリフだろう。
だからこその最後のページの悲しそうな表情なのだ。
つまらないゲームを仕掛けたことではなく、アラタの強烈な好奇心を満たす追いかけても追いつけない存在であった速水ミハヤは、いまやアラタの前にあっさりと姿を見せる存在に成り下がってしまった
飽きられるかもしれない。つまらないと思われるかもしれない。
追いかけたい存在であったからこそ、これまでの関係が続いてきたのに、こちらから姿を見せてしまえば、アラタは興味を無くすだろう。
そんな不安があるから、悲しい表情を見せたのだと考察している。
おわりに
アラタはミハヤを見つけられたのだが、ハッピーエンドには程遠いまま終わった第五十二問。
次回、ミハヤの心情、そしてアラタの想いを聴けるのを楽しみにしたい。
次回、二〇二四年四月五日更新予定。
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