読切「極刑」の感想

極刑 感想&考察

2025年10月9日(木)発売のヤングジャンプ2025 No.45にtomomi氏の読切が更新された。
発売日当日の予告だったので、驚いたが早速読んだので、感想を書いていく。
ネタバレが多いので、まだ読んでいない人はご注意を。

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概要

まず概要を振り返っていこう。端的に行ってしまえば、人形神ひんながみに憑りつかれた男の物語だ。

ちなみに彼女が人形神ひんながみである。tomomi氏が描く女性らしく、まあデカイ。どこがと言わないがデカイ。とりあえず怪異が大きくて色気のある女性にするのがtomomi氏らしい。

人形神に憑りつかれた男が、願いを叶えた未来に何を思うのか。を描いたのが本作である。

願い

人形神とは、願いを叶える憑き物の一種である。
ただし、願いを叶えた代償として、人形神を祀った者は地獄に堕ち、さらに地獄に堕ちたあとも離れることはないらしい。

そして、人形神の特徴として、一つ願いを叶えたら終わりではなく、次の願いを求め続けることにあるようだ。

ヒンナ神について(外部リンク)
・https://sumiretanpopoaoibara.hatenablog.com/entry/2021/01/12/093940

個人的に好きなシーンだが、人形神は決して祀った者から離れることは無い。

一人の時間が欲しいかな

うはははは もう倦怠期に突入とは恐れ入る

さて、この願いの叶え方だが、少なくとも描写されている限りだと、まともな叶え方ではなさそうだ。

いわゆる悪魔の契約とでもいうのだろう。

主人公の男は「自由になりたい」という願いを人形神に叶えてもらったが、その方法は家族を殺しつくすことであった。

ただ遠くに離れられればいいはずなのに、願いのために家族を失ってしまったのだ。
もちろん最初は、自分を縛っていた家族がいなくなったことに些かの安堵があったことだろう。
だが、家族という縁を失ったことで、主人公は孤独に苛まれることになるのだ。

孤独

この孤独を知るために、主人公は様々な人の自殺について考えることになる。

多くの自殺を見つめたことで、自殺を選んだ理由を孤独であると分析したのだった。

それは、家族を失い、その後も人形神に願うたびに何かを失ってきた自分が感じていることと同じであると思ったようだ。

だが、自殺者と似た状況に陥りながらも自殺できない主人公に対し、人形神がいつも傍にいるから孤独ではないと否定するのだ。

だから安心して今生を苦しめ
いつでも傍にいる

おそらく自殺しようとしても、止められてしまうのかもしれないが、主人公は罪に向き合っていきるのだろう。

読後語り

明治~対象の文豪作品の短編小説のような後味であった。

怪異が色気がたっぷりでエロくてかわいいのはいつも通りだが、作品から通して得られるのは、奪うことで得られるのはモノだけであり、心が満たされないということだ。

自己肯定感や自己効力感を満たすには、人格の陶冶と努力しかないのだ。

それらをショートカットして、目先の物欲や承認欲求を満たそうとしても失敗するか、主人公のように手に入ったとしても、人間として器ができていないために、手に入れる代わりにナニカが零れ落ちてしまうのだ。

それでも、片時もそばを離れずにいる存在がいるというのは、人間にとって、自分を肯定してくれる強い支えになる。

たとえそれが、自分のこの状況に追い詰めた人外の存在であっても……ということなのだろう。

おわりに

あらすじだけならば、二番煎じどころか三番煎じかもしれないが、tomomi氏なりの味付けがされて、怪異の妖艶さと相まって、良い作品になった。

怪異とか妖怪は、気を付けるべきことや戒めをストーリー仕立てでわかりやすく伝えるために生み出されたイマジナリーの存在であるはずなのだが、tomomi氏が描くと、本来の恐怖や厄介さを損なわずに、引き寄せられる魅力がある。
表層だけなぞった薄っぺらい擬人化でなく、元ネタの闇が感じられるのが良いのだ。

しかし、こんな美女に迫られたら、誰だって2つ返事で願ってしまうだろう。

応援の意味を込めて、もし読んでいない人は購入をおすすめする。
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