第五十四問[恐れているのはどちらか] つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

知山アラタと速水ミハヤはボードゲームに興じるが、いつまでもゴールにたどりつかないまま終わった第五十三問。

ゴール

3の目が出続け、いつまでのゴールができない状況で、ミハヤは「果たしてゴールとは何か?その続きがあるとしたら?」と問いかける。

人生のゴールを死ぬことと考え、その続きがあるとすれば、死後の世界だろう、とアラタは考える。

……知っているんですか?

出典:つれないほど青くて あざといくらいに赤い 第五十四問 著者:tomomi

このアラタの質問は、禁忌の質問であろう。
開けてはいけない扉を開き、すべてを失ってしまうようなそんな質問である。

その危険性を察してなのか、ミハヤの答えたくないという思いに呼応してか、電話と呼び鈴が鳴り響き、ドアがノックされる。

今、引き返せば元の関係に戻れる。警鐘として、鳴り響いているようであった。

結局、アラタはその先を質問できなかったようだが、聞かれた終わってしまうような質問をアラタに差し向けたミハヤの意図はなんなのだろうか。

これまでのことから類推するに、秘密暴かれたがっている。ということなのだろう。

暴いた結果どうなるかはさておき、ミハヤの願いは「自分の正体を暴くために追い求められること」、
より正確に言うには、「秘密にし続けて、いつか誰からも忘れさられてしまう存在であることは寂しい、かといって秘密を知られたら全てを失ってしまう。だからいつまでも自分を追いかけてくれつつも、ギリギリのところで踏みとどまってくれるアラタとは、もう少し深く、もう少し長くこの距離感を維持したい」という感じだろう。

まるで時間制限のある雪女の物語のようである。
一年という期限付きで過ごせるが、もしその前に正体を知られてしまえば強制終了。
かといって、その一年間の中で、なんにも自分のことを理解されないのは寂しい。
絶妙なバランスを保ちながら過ごしたいと思うのだ。

お化け

電柱の上にいる女性の姿をしたお化けはどうやらずっと見えていたようだ。
これまで物語に一切絡んでくることがなかったが、ここにきて、ついに大きくピックアップされた。

しかし、正体がわかったわけではない。
ただそこにいるお化けとして在るに過ぎない。

そのお化けにアラタは質問を投げかけるのだが、答えが返ってくる様子はない。

アラタとしても答えがもらえることを期待してのものではなく、なんとなく理解をしてくれそうな存在に聞いてほしかっただけなのだろう。

お化けと生者の恋は…
末永く続くと思うか?

出典:つれないほど青くて あざといくらいに赤い 第五十四問 著者:tomomi

この質問の良いところは「恋ができるか」ではなく、「末永く続くかどうか」を問うているところだ。
ミハヤの正体を、自分と同じ時間を生きる人間ではなく、人外=お化けなのだろうと思いつつも、この恋心を止められないとわかっているのだ。
そのうえで、ミハヤと過ごせる幸福な時間を続けたいと願い、不安を吐露したのだろう。

ミハヤの不安な表情がきっかけであったのだろうし、新聞部との騒動や、突如失踪したミハヤの行動が積み重なり、アラタは不安に思ったに違いない。

しかし、我々読者には、1年後もアラタの恋心が終わらないことを知っている(第一答より)
ミハヤとの楽しい時間は終わったのかもしれないが、恋心が尽きることがなかったのが、せめてもの救いだろう。

おわりに

ミハヤが生者でないことが暗示された第五十四問。
不安な表情の真意はわからないままであるが、次の展開が見通せない幕引きであった。

次回、二〇二四年五月三日更新予定。

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