第五十七問[この願いを何と言う] つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

第五十六問では、元テレビマンの加藤ナオキとの対話が始まった。
速水ミハヤの正体を知る手がかりとなる重要な会談である。
二年前に加藤が体験したことを聞いて、知山アラタは怒りを露わにするが、それこそが正体を暴く鍵であった。
その証明を始める第五十七問の始まりである。

窓の外

証明を始める前に、窓の外を確認するアラタ。
第五十六問の最終ページ、カーテン越しに幾人もの人影が映り込み、いつのまにやら取り囲まれていたようである。

出典:つれないほど青くてあざといくらいに赤い 第五十六問 著者:tomomi

しかし、アラタが窓の外を確認しても、誰もいなかった。
それこそ、新聞部の奴らが追いかけてきても不思議ではないのだが、ミハヤに関わってから不可思議なモノの一つなのだろう。

問答

さて、本来の目的であるミハヤの正体を知るための証明が始まった。
最初の手順は、アラタと中園ナツメが見ているものをお互いに開示しあうというものである。

最初は、淡々と答えを合わせていくが、加藤が声と目について尋ねたら、途端に回答がずれ始めた。

透き通る……女の人より少し低いくらいの
年下の男子って感じ

出典:つれないほど青くてあざといくらいに赤い 第五十七問 著者:tomomi

これが加藤の狙いなのだろう。

第五十六問で加藤が語ったのは、町の住人が語るミハヤが自分には見えなかったことである。
人間であれば、同時に見れば、同じく見えているはずだが、それが見えないということは、人間ではないことは確かであろうというのが、証明のロジックである。

同じことをこの場で再現したのだろう。

しかし、声の印象も、目の印象も、機械による観測ではなく、アラタとナツメの主観的な印象に過ぎない。

他人の印象が人によって異なることなど日常茶飯事であり、先ほどからアラタが答えるミハヤの像は、やたらと詩的な比喩が多く、普通の答え方ではない。

大枠ではだいたい一致しており、科学の目で見ていないのだから、いまいち否定できる材料にならないだろうと思うのだが、それを感じさせないのが加藤の手腕なのだろう。

一読者として思うのは、これでは証明として詰めが甘いので、物足りなく感じる。

幽霊の正体?

加藤が語る速水ミハヤの正体、それは集団幻覚が一人歩きを始めたお化けであるというのだ。

廃校のお化けの同類ということになるのだろう。

その存在に由来や原因はなく、いつの間にかそこにいた空虚がミハヤであるらしい。

人はそれを「お化け」という

出典:つれないほど青くてあざといくらいに赤い 第五十七問 著者:tomomi

最後2ページの描き方も絶妙であった。
ミハヤの足元らしきものが映り、廊下を歩いている。
ミハヤが通った後ろのほうから三毛猫が出てくるが、その三毛猫のほうから見ると、足元は見えず、黒猫だけが見えているのだ。

まるでミハヤが実在しないかのようである。
しかし、この足元がミハヤとは限らないし、アラタと交信している猫たちは、ミハヤの姿が見えているので、実在についてはまだなんとも言えない。

おわりに

加藤からミハヤの正体に対する考察を聞き、そして、その証明に組み込まれてしまったアラタ。
はたして、アラタはどのような返事を返すのだろうか。
非常に楽しみである。

話変わって、八月九日僕は君に喰われる。五巻の発売日が発表された。
七月十七日(水)が発売日だ。

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八月九日僕は君に喰われる。は更新が遅々としており、前のストーリーがすぐに読めなくなってしまうので、物語の前後関係があやふやになりがちなので、これはありがたい。

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