第四十八問[祈ったのは何故か] つれないほど青くてあざといくらいに赤い 感想&考察

つれないほど青くて あざといくらいに赤い 感想&考察

第四十七問では、速水ミハヤと知山アラタが手を組み、為水ショウコと中園ナツメを蹴散らして、犬飼を救った。
ミハヤのウインクに黄色い雄たけびがあげたことだろう。

第三十六問から続いた七不思議狩りの犯人である犬飼から真相を聞き出すことはできたのだろうかーーー

結果

本編で語られた通り、教員の介入により、犬飼を確保することはできなかった。
学校中を舞台にした騒動は、事なかれ主義でもみつぶすかのように関係者の処分は保留された。

惜しい結果である。

実働犯として動いた犬飼から、なぜ七不思議を増やしてミハヤを隠そうとしたのか、暴こうとするものをなぜ始末しようとしていたのか、詳しい背景は闇の中である。

もしかすると、犬飼も詳細は知らなかったのかもしれない。
このあと教祖のような人物が登場するが、ナツメの問いかけに対して答えられなかったのは、教祖の指示で行動をしていたので知らなかったとも捉えられる。

私の立場では……「答えられる範疇にない質問です」とだけ

出典:つれないほど青くて あざといくらいに赤い 第四十三問 著者:tomomi

昔話

ミハヤを崇める宗教の教祖ともいえる存在として、町長があっさり登場した。
第四十五問に登場した女性は彼女だろう。

この町で町長を任されている「櫻井」と申します

出典:つれないほど青くて あざといくらいに赤い 第四十八問 著者:tomomi

ミハヤの死体を見せつけた理由を問いただすアラタに、彼女が語るのは昔話である。
その昔話を要約すると、以下のことを語っていた。

  • 町長の祖先は、とある病を理由に家を追われてこの町に移り住んだ。
  • 祖先が移り住んだのは、二つ遡った時代である
     → 大正~昭和を示しているのだろう(およそ百年前)
  • 祖先の病の詳細は不明だが「心を喰う病」と呼ばれるものである。
  • どれほど時間を経過しても、祖先の「心を喰う病」は治らなかった。
  • 村の記録を残すことができないほどに衰退し始めたとき、唐突な出来事があったらしい。
  • その出来事を表すのは「最後の日、死人が神になって帰ってきた」の一文である。
  • 神となった死人は、美しさで祖先を魅了し、心を救った。
  • 神と呼んでいるが、明確な定義は他に存在しない。
  • その後も、酷似した噂が現出し続けた。

昔話というには、内容が薄く、詳細がわかりにくいものだ。
一言で言えば、美貌の存在が降臨し、祖先を救った。ということである。

これの再現が町長の狙いであるらしい。
つまり、美貌の存在=ミハヤに心を救ってもらうことなのだ。

さて「心を喰う病」についても語られ、「いる筈のないものを見てしまう病」であるというのだ。
いる筈のないものとは、怪異に他ならない。
これまでアラタが接してきたさまざまな怪異、ナツメから見える世界に存在するモノこそが、いる筈のないものである。

右目が義眼であったが、その理由はきっと見てはならないもの=怪異に汚染される醜い現実から逃避するために抉りとったものなのだろう。
怪異を見出し、自らの心を喰われ、怪物になり果てることを避けるために、アラタ以上の行為に及んだのである。

ここで疑問が生じる。

ミハヤを求めた柱場アキト、ショウコ、アラタであるが、彼らはミハヤを求めたが故に、いる筈のないものをみてきたはずである。
いる筈のないものを見ることで精神が崩壊しないように、アキトはミハヤの目を差し、ショウコは眼をそらし、アラタは自ら目を傷つけたのである。

だが、町長が語るには、ミハヤが覚醒することで、いる筈のないものを見ないようになるというのである。

起こりうる結果が、逆なのだ。
これは一体どういうことだろうか。

ミハヤが神となることで、やっと救われるということなのだろうか。

この辺りは、より深く考察していきたい。

おわりに

町長の苗字が「櫻井」ということで、八月九日 僕は君に喰われる。の櫻井青とのつながりを感じさせる。
怪異との関りを避けているがゆえに青の親が登場しないのかもしれない。

七不思議狩りを終えて、次の展開が予想がつかないが楽しみに待とう。

次回、二〇二四年二月更新予定。

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